疾病を知る

月経前症候群(PMS)って何?

2026.06.24最終更新

監修医
イーク渋谷
婦人科 各務 真紀

気持ちが不安定になったり、頭痛やだるさを感じたり。月経前のこうした不調は「PMS」の可能性があり、正しい治療やケアによって改善を目指せます。
ただ実際には「我慢できるから大丈夫」と、一人で抱えている方も少なくありません。そこで今回はPMSの具体的な症状や原因、受診の目安、治療方法ついて詳しくご紹介します。

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)とは

PMSとは、月経が始まる3〜10日くらい前(黄体期)に現れる「こころとからだの不調」のことです。この症状は月経が始まると自然に軽快、または消失することが大きな特徴です。日本人女性の70〜80%が月経前に何らかの不調を自覚しており、そのうち約5%は日常生活に著しい支障をきたす重い症状に悩んでいるといわれています※1

主な症状

PMSの症状は多岐にわたりますが、大きくは以下の2つに分類されます。

  • こころの症状: イライラ、情緒不安定、抑うつ(気分の落ち込み)、不安、不眠、集中力の低下など。
  • からだの症状: 乳房の張り・痛み、下腹部の張り・痛み、頭痛、むくみ、体重増加、だるさ、のぼせ、過食など。

特にこころの症状が重く、仕事や家庭、人間関係に大きな影響が出ている場合は「月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)」と診断されることがあります。
単なる「イライラ」ではなく、感情のコントロールが難しくなったり、何も手につかなくなったりといった状態が月経前に続く場合には、PMDDの可能性もあり、早めの婦人科への受診をおすすめします。

原因とメカニズム

PMSのはっきりした原因はまだ完全には解明されていませんが、排卵後に起こる女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の変動が関与していると考えられています。
特に、こうしたホルモン変動に対する脳の反応には個人差があり、気分や感情の調整に関わるセロトニンやGABAなどの神経伝達物質の働きが変化することで、イライラや気分の落ち込み、不安感、眠気などの症状が現れると考えられています。
また、ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣なども症状を悪化させる要因になることが知られています。

これってPMS?婦人科の受診目安

PMSの症状は月経が始まると自然に落ち着くことが多いため、「我慢しよう」「毎月のことだから大丈夫」と受診をためらう方も少なくありません。また、こころの症状については「気持ちの問題かもしれない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。けれどこうした不調はホルモンの変動が影響している可能性があり、適切な治療・ケアによって改善が期待できるのです。月経前の不調によって日常生活で困ることがある場合や、「毎月つらい」と感じている場合は、まず一度婦人科を受診してみることをおすすめします。

「受診するほどではないかも…」と迷われている方のために、当院では「イーク婦人科オンライン相談室」を開設しています。婦人科の女性専門医が、オンラインでお悩みをお聞きし、今後の受診や治療、セルフケアの方針について一緒に考えますので、ぜひお気軽にご利用ください。

どのようにしてPMSと診断される?

いざ婦人科を受診しようと思っても、どんな検査をするかが分からず不安という方も多いのではないでしょうか。PMSは、血液検査などのような特定の検査で確定できるものではありません。PMSの診断においては「症状が月経周期と連動しているか」を確認することが重要なポイントになり、イークの婦人科外来では以下のような流れで診断を行っています。

  1. 問診
    婦人科の専門医が月経周期と症状が出るタイミング、日常生活への影響などをお伺いします。
    この際、少なくとも2周期程度「いつ、どのような症状があったか」を記録した「症状日記」を持参いただくと、診察がスムーズになります。
    ご自身の症状を客観的にみるためにも、ぜひ記録をしてみてください。
  2. 除外診断
    甲状腺疾患や貧血、精神疾患(うつ病など)といったPMS以外の疾患が隠れていないかを確認するために採血検査などを行います。
  3. 治療方針の決定
    受診者さまの症状やライフスタイルに合わせた治療法を決定します。

※イーク婦人科外来は、当院で人間ドック・健康診断を受診された方を対象です。

治療とケアの選択肢

PMSは主にお薬による治療を行い、症状の程度やご希望に合わせて以下のような方法があります。

薬による治療

  • 低用量ピル(LEP:低用量エストロゲン・プロゲステロン配合剤)
    排卵を抑え、女性ホルモンの変動を少なくすることで症状を改善します。月経血も減り月経痛も改善されるので、月経による不調全般に効果的です。症状によっては休薬期間をもたない最大120日間の連続投与でより高い効果が期待が期待できます。
  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
    精神症状が強い場合に選択します。
  • 漢方薬
    加味逍遙散や当帰芍薬散など、症状に合わせて処方されます。
  • 対症療法
    痛みに対して鎮痛剤、むくみに対して利尿剤が使用されます。

いずれもイーク婦人科外来で処方できますので、ぜひご相談ください。
またPMSの症状は、普段の生活を気にかけることで和らぐこともあります。おすすめのセルフケアをご紹介しますので、ご自身の暮らしに取り入れやすいものから試してみてください。

セルフケア

規則正しい生活や十分な睡眠を心がけ、症状が出やすい時期は無理をせず、心身を休める時間をつくりましょう。
また、アルコールやカフェインの摂りすぎを控え、栄養バランスのよい食事を心がけることも大切です。ウォーキングなどの有酸素運動やヨガ、ピラティスなどの適度な運動も症状の改善に役立つことがあります。
サプリメントでは、ビタミンB6(1日100mg以下)のほか、カルシウムやマグネシウム、チェストベリー(セイヨウニンジンボク)が症状の軽減に役立つ可能性が報告されています。

さいごに

PMSやPMDDは個人の問題に留まらず、社会的な課題でもあります。日本における月経困難症も合わせた月経随伴症状による経済損失は年間約5,700億円とも試算されており※2、働く女性の多くが「症状が強くても我慢している」という現状がうかがえます。より快適に日々をすごせるようにするためにも、どうか無理をせずに医療機関への受診を検討してみてください。


出典
※1 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」(https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/
※2 経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf

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イーク渋谷
婦人科 各務 真紀