イークのこと

乳がんの検査・治療だけでなく、
大切な人の人生を支える一人として

2026.02.13最終更新

話し手
イーク丸の内
乳腺外科 中村 茉美花 

イークでの検診業務に加え、日によって聖路加国際病院ブレストセンターにも勤務される中村先生。受診されるお一人おひとりの人生を支えるために、検査も治療前後もそばで関わっていきたい。そうした強い信念の根底にある思いや原点について伺いました。

【イークと聖路加国際病院】
イークの乳がん検診では、日本有数の治療実績を持つ聖路加国際病院・ブレストセンターと提携し、読影・診察を実施しています。精密検査や治療が必要な場合にも速やかに連携し、早期発見・早期治療につなげています。

乳がんの発見から治療までの「不安な時間」を、いかに短くできるか


―先生は普段、どのような業務をされているのでしょうか?

主にイーク丸の内の乳腺外科で、診察や検査・検診結果説明、読影を担当しつつ、日によって治療基幹病院である聖路加国際病院(以降、「聖路加」)にも勤務し、スムーズに治療へお繋ぎする役目をさせていただいています。

※乳房の検査(超音波やマンモグラフィー)で撮影した画像を、専門医が観察し、乳がんの兆候がないか診察すること。

もともとは聖路加国際病院で常勤医として勤めており、イークへは非常勤で入ることがあったんです。その頃から「こんなに受診者さまに寄り添う施設はない」ということを感じていて、その思いにとても共感していました。よく「検査のときに背中をさすってもらえて安心した」「優しい声掛けがうれしかった」というコメントをいただきますが、イークには、教えられなくとも自然とそうした対応ができるスタッフが集まっているんですね。
だからこそ、年に一度の検診を毎年イークで受診してくださる方が多く、読影の際も過去の検診結果と比較して診断しています。変化を診ることで、普通は見逃すような小さな兆候にも気づけるんです。
また乳がんに関しては、一部の精密検査をイークで行い、その診断を聖路加で行うのですが、通常は2~3週間ほどかかる結果通知が1週間ほどで出ます。これは「ご不安な気持ちになっているすべての患者さん、そしてそれを支える方々のお力になれること」を使命として掲げご診療にあたられている聖路加の皆様、そしてブレストセンター部長の吉田敦先生のイークへの深いご理解があってこそのスピード感だと思います。診断後も、聖路加での治療のご希望がある方にはスムーズに手術までお繋ぎします。

実際、イークの検診で小さな乳がんが見つかり、すぐに手術を行うことで、早期に職場復帰をされる方がたくさんいらっしゃいます。また、一度乳がんの手術を受けた方は、一般的な検診では再検査になるケースも多いのですが、先ほどもお話ししたようにイークではこれまでの検診結果を踏まえたうえで診断をしており、受診者さまのご負担になる精密検査や再検査を減らす努力も徹底しています。

病気を治すだけではない「人生の大切な一日」に寄り添う医師の仕事に触れて

―検査や診断、治療まで…。忙しい毎日だと思いますが、そもそも中村先生が医師を目指されたきっかけをお聞きしたいです。

私が医師を目指すようになった原点は、小学校6年生のときに経験した入院です。 それまで大きな病気をしたことのなかった私にとって、小児科病棟での生活は、厳しさと同時に、非常に繊細な医療の現場を体感する時間でもありました。院内学級に通う同年代の子どもたちの存在、病室の窓から見えるNICU、夜になると小さな赤ちゃんが運ばれてくる光景。 そうした日々の中で、忙しい中でも患者一人ひとりの話に丁寧に耳を傾け、何度も病棟を行き来していた若い女性研修医の先生の姿が、強く印象に残っています。
 経験豊富で安心感のある主治医がベッドサイドにいらっしゃるのを心待ちにしながらも、その女性研修医の先生が朝昼晩、子供達の診察に来てくださるのが毎日の楽しみになっていました。夜通し働いているように見えても、翌朝には疲れを感じさせない穏やかな表情でいつも病棟に立っていました。どんな時もきれいにお化粧をし、かわいい髪留めをつけ、白衣にきっちり袖を通す。その姿は今でも私のロールモデルとなっています。
家族が医療従事者ということもあり、日常生活の中で医療というものが特別遠い存在ではない環境で育ってきましたが、この経験を通して初めて「医師」という仕事が単に病気を治す存在ではなく、誰かの人生の大切な一日に寄り添う、非常に尊い仕事なのだと実感しました。


―現在、乳腺外科の医師として、日々の業務で大切にしていることは何でしょうか?

私が何より大切にしているのは、常に患者さま・受診者さま中心の医療を行うことです。 お一人おひとりに、それぞれの価値観や生活背景があり、仕事やご家族、これまで歩んでこられた人生があります。 そのため、診療の場では常に 「もし自分がこの方だったら」 「もし自分の家族だったら」という視点を持つことを意識しています。
医師にとっては日常の一日であっても、受診される方にとっては、 がんを告知されるかもしれない日、乳がん検診の結果を聞く日、 治療方針を決める日など、人生を左右する大切な一日の始まりであることも少なくありません。 どんなに忙しい状況であっても、気持ちを整え、医師として患者さまの前に立つこと、それは医師になった当初から現在まで、一貫して大切にしている姿勢です。
ロールモデルの話ともつながりますが、自分の担当医が疲れた表情や姿だと不安になりますよね?特に乳がんは、どんなお仕事をされていて、ご家族はいらっしゃるのかなど、さまざまな背景をお聞きできれば、より治療やサポートの介入がスムーズに進むことも多々あります。だからこそ信頼関係を築くことがとても重要です。私は一度お会いした方のお名前を忘れないよう、診察しながら何度もお名前をお呼びし、そのうえでお話をお聞きするようにしています。患者さま中心ではあるけれど、患者扱いは決してせず、「人と人」として向き合うようにしています。

大切な人の死を経験して改めて感じた、医療者の存在の大きさ


―イーク全体の方針としても「受診者様視点」を掲げていていますね。

そうですね。受診される方との信頼関係は、一対一でつくられるものではなく、関わるすべての医療者との間で築かれると思っています。イークは本当にみんなが「受診者様視点」に立つ姿勢を大切にしているので、自分の信念を貫ける場所だと思っています。
近年、私自身も身近な人の病気や死を経験しました。 医療に携わる立場であっても、家族としてそれを受け入れる過程は非常に辛く、どれほど医療知識があっても、大切な人の死を前にしたときの感情や喪失感は、簡単に乗り越えられるものではないと痛感しました。
そのような中で支えになったのは、周囲の人の存在でした。業務中は、看護師さんもスタッフさんも、そして聖路加の吉田先生も、すべてを理解したうえで静かに寄り添ってくださり、逆に仕事をしていることで私自身が支えられたことを覚えています。
病に直面したとき、 信頼できる家族や職場の上司、そして治療とケアにあたる医療者の存在が、心の大きな支えになる。そして、医療者がそばにいるという安心感は、治療そのもの以上に、人の心を支える力を持っている。 この経験を通じて、医療は治療だけで完結するものではなく、人と人との信頼関係の上に成り立つものだと、改めて強く感じています。

乳がんの患者さまとご家族のつらさは、計り知れません。だからこそ、できることはすべてしたいという思いが、これまで以上に強くなりました。幸いにも今、その思いを実践できる環境に身を置くことができています。イークでの検査・読影、そして聖路加での治療を通じて、患者さまに一日でも早く安心を届けられるよう頑張り続けたいです。


-今後、イークで取り組みたいことはありますか?
乳がん検診を「受けなければならない義務」ではなく、「自分を大切にする時間」として、ごく自然に受けていただける方が一人でも増えてほしいと考えています。
私が乳がん診療で大切にしている「ブレスト・アウェアネス」とは、難しい自己検診ではなく、自分の乳房に関心を持ち、日常の中で変化に気づける感覚を育てることです。 ご希望に応じて乳がん検診の当日に検査結果をお伝えしつつ、これからどのように過ごせば安心できるのかや、次の検診までに意識していただきたいポイントも含めて丁寧にお話ししています。検診を受けることによって「安心できた」だけでなく「気持ちまでなんだか少し楽になった」と感じていただくことが、乳がん検診を「自分を大切にする時間」と感じてもらえる一歩になると思っています。 忙しい日常の中で、ほんの少し立ち止まり、自分の体に目を向ける。こうしたイークでの時間が、これからの人生を軽やかに支えるものになればと思っています。

話し手
イーク丸の内
乳腺外科 中村 茉美花