疾病を知る

子宮筋腫の治療方法

2025.08.19最終更新

監修医
イーク渋谷
婦人科
豊泉 理絵

子宮筋腫が発見されても、全ての方にすぐに治療が必要ということではなく、小さな子宮筋腫の場合、経過観察となることが多いです。治療が必要な場合には、薬物療法や手術を検討します。

治療が必要な場合には、筋腫の状態とご本人のライフプラン(日常生活に及ぼす影響、妊娠出産の予定、閉経までの期間など)に応じて薬物療法や手術を検討します。

薬物療法

子宮筋腫の治療で行う薬物療法には対症療法とホルモン療法の2つがあります。

1.対症療法

1)鎮痛剤

強い月経痛が起こった時に痛みを抑える目的で使用します。 同時に胃薬が処方される場合もあります。

2)鉄剤

貧血の改善を目的として使用します。飲み薬で効果が出ない方や重症貧血の場合には静脈注射をする方法もあります。

2.ホルモン療法

子宮筋腫はエストロゲンの影響で大きくなるため、エストロゲンの分泌を調整することにより子宮筋腫のサイズを小さくすることができます。

1)Gn-RHアゴニスト/Gn-RHアンタゴニスト

視床下部ホルモンのGnRHの促進剤(アゴニスト)や拮抗剤(アンタゴニスト)によって卵巣からのエストロゲンの分泌量を低下させます。低エストロゲン状態になるため月経もなくなり、子宮筋腫が小さくなる効果も期待できます。そのため月経痛や貧血などの症状も軽減されます。一方で更年期症状が出たり、骨密度減少のおそれがあるため、長期にわたる使用が出来ません(6ヶ月以内)。 現在はアンタゴニストの内服薬を使用することが一般的になっています。使用をやめると子宮筋腫は元の大きさに戻ることも多く、6ヶ月を1クールとしてくりかえし使用するケースもあります。閉経が近い年齢であれば逃げ込み療法といって、閉経までの期間内服することで症状を改善する有効な手段と言えます。

2)低用量ピル

ピルはエストロゲンとプロゲスチンを配合した薬です。子宮内膜の増殖を抑制する働きや子宮内膜からのプロスタグランジンの産生を抑制することで子宮筋腫が原因となる月経困難症においても症状軽減に効果があります。ただし、症状の軽減には効果がありますが、子宮筋腫のサイズ縮小の効果は限定的です。
また副作用として血栓症、一時的な吐き気、頭痛などの可能性があるため、医師の指導のもと服用する必要があります。

手術療法

子宮筋腫による症状があり、薬物療法だけでは改善が見込めない場合、手術療法が検討されます。当院では手術療法を実施しておりませんので予めご了承ください。

1.子宮全摘術

妊娠の希望及び妊娠の予定がない場合は子宮全摘術を行います。開腹、腹腔鏡、腟側からの操作のみによる腟式の術式があります。近年は腹腔鏡手術が一般的で、お腹に傷がつかない膣式の腹腔鏡手術を実施する施設も増えてきています。ただし、最終的な術式は病変の大きさや位置、可動性の有無などを考慮して実施することになります。

2.子宮筋腫核出術

妊娠の希望及び予定がある方、妊娠の可能性のある方、子宮を残したい方を対象とする手術方法です。子宮筋腫の部分だけを取り除く方法で、妊娠に必要な子宮を残すことを考慮した手術です。発生部位、大きさや数などを考慮し、開腹手術か腹腔鏡手術かを選択します。子宮を残すため、子宮筋腫が再発することがあります。また妊娠時の分娩方法は子宮破裂のリスクを考慮し、帝王切開になります。

3.子宮鏡下子宮筋腫摘出術

膣側から子宮鏡(カメラ)を挿入し、筋腫を切除する方法です。膣側からの操作のため、お腹に傷がつかない手術方法になります。子宮腔内に突出したあまり大きくない粘膜下筋腫が対象となります。子宮筋腫の大きさや内腔への突出する程度によるため、最終的な手術方法は主治医と相談になります。

4.子宮動脈塞栓術(UAE)

鼠径部から血管内にカテーテルを挿入し、子宮を栄養する血流を遮断することで徐々に子宮筋腫を縮小させる方法です。お腹に傷ができない、比較的低侵襲な手術になりますが、治療後に疼痛、感染、発熱、倦怠感を感じることがあります。また卵巣機能低下など合併症を併発するおそれがあります。基本的に今後妊娠を考える場合にはUAEは選択できません。合併症などさまざまな理由により手術が困難な場合に選択されますが、国内ではまだ実施施設が限られており、治療実績のある医療機関での実施が望ましいです。

監修医
イーク渋谷
婦人科
豊泉 理絵